2020.08.22

BMXプロレーサー榊原魁の最新状況に関してー5

BMXプロレーサー榊原魁の最新状況に関してー5

榊原魁の最新状況に関して、ご家族からアップデートがありました。

2020年8月15日
クラッシュから189日
リハビリ開始から136日

前回の状況報告から随分経ちましたが、その間もたくさんの方々に魁の状態を尋ねて頂きました。嬉しいことに、魁はその後も全てのリハビリで着実に前進し続けています。

8月15日土曜日の今日までに、節目が二つありました。一つ目は、7月29日。魁は24歳の誕生日を迎えたことです。一時、魁には次の誕生日が来ないのではないかと思われたこともあり、これはかなり私たちにとって重要なことでした。二つめは8月8日。クラッシュから丁度6ヶ月、リハビリを始めてから4ヶ月です。ここまでの道のりは、永遠とも一瞬とも感じられる非日常的なものでした。

前回の報告は、魁がBIRU(脳損傷のリハビリテーション病棟)に到着して2週間が経った頃でした。新しい環境に慣れるまでの最初の数週間は私たちにとって精神的に厳しいものでしたが、魁のリカバリーに集中できる場所に移ることができたのは素晴らしいことでした。

その時点で、魁の怪我がどの程度のものなのかが少しずつ分かってきました。クラッシュにより脳の中心部分左側で出血が起こり、脳にダメージを与えました。これにより魁は体の右側(手、足、顔)の動きを失いました。初めは声を発することもできませんでした。時が経つにつれて魁は言語障害と短期記憶障害があることが分かりました。また、歯を磨くなどの基本的な動作も忘れてしまっていました。何もかもゼロからのスタートでした。体重も20kg落ちてしまい、頭を持ち上げて支えることもできませんでした。

取り組むべきことは山ほどありました。

魁のリハビリは、運動療法、作業療法、言語療法、ダイバージョナルセラピー、心理療法、ソーシャルワークがあります。

魁が強くなってくるにつれてスケジュールもタイトになって行きました。始めの頃、魁のセラピーは一日に2、3時間程度で、それでもとても疲れてしまい、昼頃に数時間の休憩が必要でした。それでも段々体重も増え、エクササイズも徐々にできるようになってきました。

全てにおいて改善が見られてきました。コニュニケーションも良くなり、右足も段々と強く動かせるようになってきました。運動療法士が足の強化に力を入れてくれたおかげで、クラッシュから14週間後、補助付きで立ち上がることができました。魁はまた歩くことができるかもしれない。これは私たちにとって大きなステップでした。

魁がリハビリにベストを尽くしている間、BMXを始め、広範囲にわたるコミュニティーから驚くほどのサポートを頂きました。サムとアリス・ウィルビーは“77 for 77” を立ち上げ、男性は77kg、女性は77ポンドのベンチプレス77回のファンドレイジングを世界中に広めてくれました。これによって沢山の人たちが77のために何かを77回チャレンジしてくれました。本当に有り難いです。

またオーストラリアチャンネル7のマット・カーマイケルが連絡して下さり、素晴らしい魁のストーリーを作ってくれました。
https://www.facebook.com/watch/?v=919495941810249

魁のリハビリに対するアプローチは今まで通りのトレーニングに対するアプローチと全く同じで、魁の力をベストに出せるよう自身でコントロールしています。セラピスト達は魁の強さと決意に感心し続けています。

⁃ 「魁はいつもフィジオに110%のやる気で臨んでいます。彼の集中力と何時間ものトレーニングで彼はゴールを達成し続けられるでしょう。」(運動療法士)
⁃ 「魁は日常生活で人に頼らずに生活できるよう懸命に努力しています。彼のリカバリーへの忍耐力は称賛に値します。」(作業療法士)
⁃ 「いつもやる気を持ってセラピーに臨んでいます。彼のポジティブな姿勢は素晴らしい。」(言語療法士)

それでも魁自身からは前にも聞いたセリフが。
「俺は良くなる(速くなる)ために十分やっているのかな‥」

クラッシュから4ヶ月、魁はようやく週末に自宅に帰って来られるようになりました。これは私たちにとってもう一つの大きなステップでした。魁は家に帰ってこられて本当に嬉しそうでしたし、しばらく会っていなかった友達が訪ねてきてくれて楽しい時間を過ごせています。魁は金曜日の午後に家に帰り、日曜日の夕方病院に戻ります。そして翌日月曜日からリハビリ一色の1週間をスタートします。

魁が週末家にいるということは、爽と一緒に過ごす時間が増えたということでした。数週間前には、近所で爽がスプリントをする間魁がタイムを測る手伝いをしました。魁と爽は普段からBMXのための旅やトレーニングを一緒に計画し、努力してきました。

先日ファーストトラック株式会社とZwiftジャパンが爽とチャリティーライドを計画して下さいました。イベントは世界中からライダーが参加し、インスタグラムでライブストリーミングされました。魁はガレージで爽がライドするのを応援しました。

家族として私たちはできうる限り魁をサポートしています。毎日家族の誰かひとりが病院に行き、セラピーをアシストしています。他に追加の運動やストレッチをしたり、コーヒーを飲みに連れ出したりします。BIRUは本当に素晴らしい治療やサポートをしてくれて、そして私たちはその合間のギャップを埋めています。魁が回復して自分のことができるようになると、私たちも一歩ずつ下がって見守ることができるようになりました。

最近魁は卓球を始めました。車椅子でしかも左手でプレーするのは難しかったですが、段々とうまくなりました。ラリーを何回続けられるか挑戦していますが、初めは5回だけ、今は102回続けることができました。先週、運動療法士と284回ラリーを続けることができたので今の目標は500回となっています。魁はチャレンジが好きですし、卓球は良いリラクゼーションタイムになりました。

コミュニティーからのサポートは本当に素晴らしく、魁も、とても元気付けられると言っています。沢山のBMXクラブがファンドレイジングを計画してくれ、沢山の人たちから温かいメッセージを頂いています。自転車やヘルメット、車のウィンドーに#KaiFight77のスティッカーを貼って頂いています。また以前魁がコーチした選手のお母さんが魁のために歌を作って、歌って下さいました。(この歌は後日#KaiFight77フェイスブックページにアップします)皆さんが魁を忘れないでいてくださって、とても嬉しく思います。

現在の状況
• 4ヶ月前には全くできなかった会話が少しできるようになった。
• 右足の大きい筋肉をかなり動かせるようになった。
• 介助付きで短い距離を歩けるようになった。(まだ優雅な歩行ではありませんが)
• 右肩と右肘を少し動かすことが出来た。
• 短期記憶が少しずつ改善されてきた。

今後について
• リハビリを継続する。
• 長い道のりで、どの程度回復するのかわからない。

魁と私たちの行路に関わって下さったみなさんに感謝いたします。

One day at a time, one moment at a time. Let’s go.”
一日一日を着実に。一瞬一瞬を着実に。突っ走って行きます!

敬具
榊原魁 家族
#KaiFight77